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2011/06/28

ペデュキュアと般若心経

私が介護の仕事に就いて、もうすぐ10年になります。
私がこの職に就いて、最初に担当させて頂いた方が、
亡くなられました。
96歳。女性の方。
認知症で、家族も身寄りもなく、施設での生活。

不動明王さんがお好きでしたので、車椅子を押しての散歩に、
私は必ず、不動明王さんのお寺へと寄りました。

手を合わせて、
「あなた、そなた、こなたのお陰で・・・・」が彼女の口癖でした。

彼女には好きな方がいらっしゃいました。
お相手は彼女の主治医でした。
40以上も歳の差がありましたが、
彼女は本当にお好きのようで、
定期健診の時など、声も出なくなるほど、
先生の前では恥らってありました。

私達介護士の間でも、彼女の恋にほのぼのと、
高齢で、あんなに健気に恋ができる事を、
羨ましくも思っていました。

「先生に会いたかよ~」とため息をつかれ、
「こんな姿は、先生に見られたくなか~」など、
ほんとに女性でした。

何年かして、息子さんが訪ねて来られました。
いろいろあったのでしょう、疎遠になっておられたようです。
彼女は息子さんを覚えてありました。
そして、私を紹介してくれました。
「私のね、お世話をしてくれてる人よ・・・」
息子さんは、私に対し、大きな声で「ありがとうございます!」と言われ、
深々とお辞儀をされ、しばらく頭を上げられませんでした。
私は人から、こんなにも深いお辞儀を、生まれて初めて受けました。
一生忘れる事はできません。

私達介護士は、化粧やアクセサリー、香水などをあまり使用しません。
入浴介助になれば、汗やお湯で化粧は剥げますし、
ネックレスやピアス、は認知の方から掴まれた時、危険です。
指輪は介助する時、相手の方を傷つける恐れがあります。
髪が長いままだと、引っ張られる事もあったりで、
ファッション的にはいろいろ制約があります。

でも女です。
職場は色気のない場面ばかりで、そんな気持ちも吹っ飛ぶような、
毎日です。
でも女です。女である事を意識したい・・・
みんなそうなのでしょう。
入浴介助をする時、みんな裸足になりますが、
不思議と多くの女性がペデュキュアだけはしています。

日頃、とても地味な格好をしているので、
そのペディキュアが、とても鮮やかに映ります。

お年寄りの方も、嫌悪感を抱く方は少なく、
「赤い爪、綺麗ね。黒爪もあるの?まあ、可笑しい」と笑われたり・・・
意外と寛容だったりします。

そして、あの彼女です。「私もしてほしか~」
その一言で、私達介護士・・・いえ、女性達が共感を覚え、
施設の女性皆さん、ご希望の方にペデュキュアをするイベントを行いました。

明治生まれの方や、初めてされた方など、とても喜んでおられました。
嫌悪感どころか、笑顔と歓声とで、高齢なんか関係ない、
やはりみなさん、女でした。
映画、タイタニックで、デッキに登り、思い出の青い宝石を投げ込むシーン。
彼女も真っ赤なペデュキュアをしていました。
「女の心は海のように深いの、秘密がいっぱいよ」

私は自分を着飾ることにあまり関心がなかったのですが、
その事があってから、少し勇気をだしてペデュキュアを楽しむようになりました。
お姑さんをはじめ、家人にはかなりのブーイングでしたが、
今も、こっそり続けています。赤や濃い色は抵抗がまだありますが、薄い色。
儀式のように、足の爪に色をのせています。。

彼女との係わりで、もう一つ知り得た事。
般若心経。
彼女の居室にいつもあり、
時々、めくっては唱えてありました。

宗派を問わないとされる般若心経。
とても短いお経です。
私は無宗教ですが、このお経をいろいろ調べていくうちに、
好きになりました。
書いてある内容は、
Let It Beや、ケセラセラ、Take it Easy、なんくるないさ。
のような自分の好きだった言葉とリンクしているようでした。

「私が死んだら、この経ば唱えてな」その言葉が思い出されました。
私のiphoneには、般若心経が入ってます。
今日の夕日も綺麗で、向かって唱えましたよ。

亡くなられた時、息子さんは来られなかったそうです。

ご遺体はご本人の昔からのご希望通り、
検体となりました。

そしてあの不動明王さんのところに行きました。
仏の穏やかな姿では、救えない人がいると、
自らの姿を恐ろしく変え、人を導くとの事ですが・・・
私はその姿が、切なく好きです。
父性を表しているような気がしています。

彼女にはいろんな事を教えて頂きました。
私の介護職の原点です。

今あるのは、あなた、そなた、こなたのお陰です。

ほんとうにありがとうございました。

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