2012/03/12

はるならい(春北風)

 
 春が春の習い

 あなたがあなたの習い

 羽ばたく習いのように

 さえずる習いのように

 真剣なのに

 どこか笑ってしまうのは

 見守る思い

 
 春が春の習い

 私が私の習い

 春なのに寒いように

 過ぎ去った風が戻るように
 
 うれしいのに

 どこか寂しく思うのは

 手放す思い


 子供たちよ
 
 だいじょうぶ

 見知らぬ土地が

 慣れない人が

 大切に思えるまで

 呆れるほど親バカでいよう

  
 だいじょうぶ

 振り返るのを忘れるまで

 見ていてあげる

 
 忘れるまで

 見ていてあげる
 


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2012/01/04

原石

それは
違う形で
いつも傍になく
確かめられない
しっくりこなくて
満たされない痛み
何かと比べて
卑屈になり
心揺れて
寂しい

それを
この手の中で温めて
しかと握って

いつか
手が馴染んで

かけがえのないものにしていくんだよ
輝くものにしていくんだよ

みんなそうやって
笑ってるんだよ

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2011/12/05

わすれる


わすれるもの
いつかわすれるもの


また
感じるために
出会うために
大切にできるために


何度でもわすれる

紅葉の舞い散るように
あなたが
苦しむことなく
悲しむことなく


これからの冬を生き抜く
当たり前の営み
わすれる


風になり
光になり
色になり
形になり


またあなたの元に訪れる


うつくしきもの
いとしきもの
せつなきもの


めぐるめぐる


これからのあなたが
しっかり生きられますように
祈りに似た


いつか忘れられるほどに
愛されている

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2011/08/09

イトトンボ

たかがそれだけのこと
所詮それまでのこと

そうやって
いくつも諦めてきた
そうやって
何度も自分を説得した

真実を見つけたつもりになって
上手く気流にのったつもり

どこにいくの?

人生なんて
恋なんて
仕事なんて
人なんて
こんなもの

どんなもの?

わかったふりして
素知らぬ顔
素直に笑ったつもりで
ベソかいて

せめて
上手く泣けたらいいのにね

たかが
所詮
なんて
なんて

消そうとしても消えない灯り
細々と存在する
あなたらしさが揺らめいて

割り切れないんじゃない
割り切りたくない

そんな私が生きてます


H238ititonnbo

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2011/07/09

七夕

満天の星々
巡り会った奇跡

手を伸ばして
求め合う
届かぬ思いが煌く

何億光年前の囁き
もう実在しないかもしれない星に
心を寄せて
願いを綴る

夜空に放った願いは
無重力の中
慣性の法則に従い
光と共にさまよう

つかまえて
つかまえて
永遠の鬼ごっこ
あなたとなら
いつまでも

戯れも真剣な
子供のまま

天の川で魚座を捕まえ
薔薇星雲を摘みに行こう
こと座を奏で
のどが乾いたら
こぐま座ヒシャクで水を飲む

身体を脱ぎ捨てて
心は自由
小さな小さな
光を灯そう

今この時
生きてる限りの
瞬く光

星はあまた
願いもあまた

暗黒の世界で
巡り会う
光の奇跡に
酔いしれる

人を超えて
時を超えて
宇宙の法則
あなたとともに

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2011/07/02

夕焼け

音がない
叫んでみても 響かない

目の前に広がる 広大な紅(くれない)よ

すべてを
優しい光で 奪っていく

どんなに思いを告げても

容赦無く あたたかに紅(くれない)

過去が今に 手を差し伸べて
そっと誘ってゆく

行かないで 行かないで

引きとめる術を知らないから

寂しさだけが黒く足元に長引いて

身動きできないでいる

仕方ない 見送るよ

仕方ない 泣いているよ

空と大地の狭間で

一直線のさよならを

ずっと 見ていてあげる

ずっと ずっと 見ていてあげる

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2011/06/13

夢と現の狭間の音

夢と現の狭間の音

チャリ チャリ チャリ チャリ

眠っていた真夜中に聞えてきた
布団の中は温かで
幼い目は
開けたくはなかった
ただ耳に響くあの音に
意識が向かっていたのです

チャリ チャリ チャリ チャリ

お父さん あの音は何の音?
あれはタイヤのチェーンの音
どこかで雪が積もっているんだ
握った父の手は温かで
夢か現か どこかで雪が

チャリ チャリ チャリ チャリ

通りすぎるのを
目を瞑ったまま聞いていた

ガタコン ガタコン ガタコン ガタコン

修学旅行の寝台列車
雪国に向かう私達
馬鹿騒ぎと真剣さと
笑い合うたび交差して

眠れないまま
無理やり目を閉じて
それでも駅に停車する度に 
眠っていた事に気がついた

ガタコン ガタコン ガタコン ガタコン

こっそりカーテンを開けて
曇ったガラスを拭っては
明るい光に照らされて 
白いボードに記された駅の名前
出発前に見た 地図にある駅の名前
少しづつ少しづつ
私達は向かっていた
夢か現か 見知らぬ土地で

ガタコン ガタコン ガタコン ガタコン

向かっていたのを
眠れないまま感じていた

あれから
随分通りすぎ
随分向かったはずなのに
夢と現の狭間の音はまだ聞こえない
冬の真夜中
あなたと一つの寝床を温めて
これからいったいどれくらい
過ごしていくというのでしょう

安らかな寝息
ぬくもりの気配
夢か現か
それらを聞いたような気になって
ここにこうしていることさえ
儚い不思議な夢のよう

いい夢ばかりではないだろうに
やはり無邪気な儚さで

辿りつけば眠っていたと気づく驚き
問えば答えた父の声
景色にはっきり灯る駅の名前
そんなものを期待してるわけではないけれど
それはいつも突然に
訪れるものだから

ただ今は
つかの間の静寂に目を閉じて
ゆっくり意識は
夢か現か
あとどれくらい
狭間の音が聞えるまで
冬の夜に添い寝する

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2011/05/15

答えの形

一つと同じ形のない
一瞬たりとも
とどまらない
空に浮かぶ
白い雲

答えの形

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2011/04/29

ありがたい

葉擦れの 音が招きて 夏あんよ

新緑の葉擦れの音は柔らかい
光に透けるほどのきみどりの木漏れ陽

今日も沢山の瞬間を過ぎ去った
雑草の中に一輪だけ咲く菜の花や
大根畑の大根の白い花の満開や
八重桜の桜吹雪
一年生達のランドセルの輝き

一瞬
心にとどまり
写真や言葉や絵などの形にしたい
形にして残したいと思いながら
過ぎ去ってしまった

私を励まし、許し、和ませてくれた
沢山の一瞬

ありがたい

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2011/04/12

導くもの

明日へと導くもの
真っ赤な夕日
焼けた空
きらりと光る
宵の明星
夕餉の匂い
灯る町明かり
家路を急ぐテールランプ

ただいまの声に
おかえりなさいのお返事

繋がっていく
細い細い糸を紙縒るように
ため息がでるくらい
あくびがでるくらい
許される
毎日

おやすみなさい

慣れた安心の中で

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